interview 会員企業インタビュー

イームル工業株式会社

イームル工業株式会社は、1947年(昭和22年)に創業され、水車発電設備の新設・取替え・維持管理を主業とする水力発電プラントメーカーです。中小水 力の水力発電プラントを取り扱っており、中国地方を中心にエリアを拡大しています。近年では、国内外における再生可能エネルギーへの関心の高まりも追い風 に、大きな注目を浴びる企業です。今回の「つながる」では、イームル工業株式会社の中井社長、国久執行役員に、事業展開や人材育成、大学との連携等幅広い 内容でインタビューを行いました。

中井社長

―近年、貴社の小水力発電事業は大変注目されています。小水力発電に取り組まれるに至った経緯を教えて下さい。

弊社が創立された1947年は、ちょうど戦後の電力不足の時期であり、合わせて農村が疲弊しているという時代背景がありました。そのような中で、創業者・織田史郎(三段跳びで日本人初のオリンピック金メダリストとなった、織田幹雄氏の実兄)は、「中山間地域に電気が足りない。農村が元気にならないと、日本が元気にならない!」という想いから、出身の電力会社で学んだ経験を生かし、自身で水車の設計に独自開発で取り組みました。新たな事業を立ち上げたという意味では、当時の「ベンチャー企業」とも言えます。
「イームル」(EAML)の語源は、Electric(電気)、Agriculture(農業)、Machine(機械)、Life(生活)の頭文字を並べたものです。元々は、電気機器を表す別の頭文字(Apparatus(器具)、Light(照明))を語源としておりましたが、弊社事業と農業との関連性が深まる中で、時代の流れと共に語源も変化してきました。

―顧客や競合等はどのような先になりますか。

創立当初は、農村に電気を十分に供給するという主旨から農業協同組合が主な顧客でした。その後、電力会社とも取引が始まり、県の公営企業局等顧客網が広がっています。他社の事例ですが、最近では一般の方が共同でファンドを設立し、売電を目的とした小さな発電所を作る事もあります。
再生可能エネルギー固定価格買取制度においては、200kW 未満の規模の買取価格が高い為、その規模の設備設置が多くなっています。メンテナンスでは、1,000~10,000kW の規模のものを得意としています。弊社の競合としては、幅広い規模の設備を手がけている大手企業も存在しています。中小企業においては、水力発電メーカーとして一般的に認められているのは、東日本で数社、西日本では弊社のみとされていましたが、今後増えてくるでしょう。

―火力・原子力等様々なエネルギーが台頭してくる中で、水力に拘ってきた理由は。

創立当時は、そもそも火力や原子力といったエネルギーは無かったので、水力発電に取り組む事は自然の流れだったと言えます。ただ、会社の浮き沈みの中で苦しい時期があった事も事実です。その中でも水力に拘ってきたのは、「水を愛し、無限の水エネルギーを利用して、かけがえのない地球環境を守り、豊かな社会を築きます」という会社理念を守ってきたという事に尽きます。おかげ様で、今は再生可能エネルギーが注目されており、長年拘ってきた甲斐があったと思います。

―今後の事業展開について教えて下さい。

中国地方を中心に、西日本で培ってきた経験をベースとして、東日本にも進出していきたいと考えています。ただし、弊社の事業においては、メンテナンス対応が非常に重要です。その為にも、段階的に東日本にも拠点を設け、お客様のご要望に十分にお応え出来る体制を整えていきます。

―海外進出も検討されるのでしょうか。

昨年3月、ラオスに当社の水車を3台設置致しました。これは、JICA が実施するODA 事業で国内電気機器メーカーが建設した小水力発電所に提供したものです。これまで、特段のトラブルも無く順調に稼働していると聞いています。
現在の新興国は、弊社創業当時の日本と状況が似ており、無電化地域や電力が不足している地域は多く弊社にとって大きな市場です。その一方で、やはりメンテナンス対応が重要な為、一気に海外進出する事は難しいと考えています。
現地企業とも協力し、維持・管理出来る体制を整えていく必要があります。また、ヨーロッパにおいても日本同様小水力が見直されています。1999年にスウェーデンのポンプメーカーが開発した水中タービン発電機の製造・販売権のライセンスを契約しましたが、そのような関係を生かし、今後連携した事業展開を考えていくつもりです。

―大学との連携について、考えをお聞かせ下さい。

広島大学とは、約10年前からインターンシップで数名学生を受け入れるという形で連携を行っています。最近では、タイ出身の広大留学生が入社し、現在流体力学に関する研究に取り組んでいます。今年も、法学部の学生1名が入社しました。
流体力学に関するものだけでなく、水車で使用する新たな素材の検討やセンサーを使った設備の遠隔モニター、設備のモデル試験における評価の仕方等、幅広い分野での連携は考えられます。
広島大学との共同研究については、これまでは単発で終わっているのが正直なところです。大学との距離が近いという面も生かし、より社内課題解決の為に連携を深めたいと思います。

―広大生も採用頂いているとの事ですが、どのような学生を求めておられますか。

中小企業の特長として、幅広い業務分野に携わる事が出来る点が挙げられます。大学での専門分野に関わらず、入社後は設計・製造・研究等はもちろん、経理等も経験頂くことになり、自身の幅が広がります。今後海外展開も考えている事から、海外を舞台にした仕事に携わる機会もあります。自身の仕事が、長きにわたって形に残る事も大きな喜びです。中小企業でありながら大手企業とも渡り合えるという点もやり甲斐につながります。注目を浴びている分野でもあり、チャレンジ精神を持った学生さんに是非入って頂きたいです。

―協力会サービスについて、ご意見をお聞かせ下さい。

社内でも研修プログラムの見直しを進めていますが、「イノベーション研修プログラム」は、大学研究者の講義を受講出来る点で魅力を感じます。社内や仲間内だけで得られる技術や知識には限界がありますので、上手く活用する事で幅を広げる事が出来ます。社内研修と組み合わせて利用し、より社内教育の充実を図りたいと思います。

インタビューを終えて

創業から一貫して水力発電事業を行ってこられた当社。苦しい時期にあっても、会社理念に基づいてぶれる事なく取り組まれた姿勢が実を結んでいる事に、とても感銘を受けました。中国地方で築き上げた基盤を元に、日本全国や世界に飛び出すという意味では、広島大学が目指している姿と似ている部分もあります。このような地域企業との「つながり」を深め、地域全体が活性化する活動を今後とも行って参ります。

インタビュアー 橋本 律男、真鍋 幸男、野村 武司

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